故 江頭匡一ファウンダー語録

この「江頭語録」はロイヤルの設計士として江頭ファウンダーの側近として働いて来られた、ビューロードエチュードの 代表 宮地明生氏よりいただいた貴重な語録です。店舗設計をはじめ多くの仕事で時間を共に過ごされ、物の考え方を教えられた事を弊社のホームページに残す許可をいただきました。わたくしも故・江頭ファウンダーに育てていただいた者と して「感謝」の気持ちを持って皆様にお伝えして参ります。どうぞ、故・江頭ファウンダーをお一人お一人の心により深 く感じていただきたく、ここに記させていただきます。「襟を正して」江頭ファウンダーに答申させていただいた「凛と した時間」「あの気立ての良い女性社員」と言っていただいた事は、わたくしの一生の宝物です。徹夜しユニフォームの「蝶ネクタイ」の図鑑を作成し説明させていただいた際に、最後まで話を聞いていただき「君に任せるよ」と優しくお応 えいただきました瞬間から、「仕事は一生懸命に取り組む事」と自分に言い聞かせ続けております。                「素早く、いい仕事をして忙しくあれ」をモットーに弊社がお役に立てる事が継続しますよう精進する日々でございます。宮地 明生先輩、40年前のマーケティング室でのご指導は今もわたくしの身体に染みついております。いつもいつもあたたかいお言葉をいただき本当にありがとうございます。心から感謝申し上げます。   ㈱セイント・オフィス 清水 清美拝

1、「脚下照顧」 禅宗の言葉で「足元を照らし顧みる」と読むそうですが、創業者の父親が、創業者の部屋の壁にかけら     れた言葉で、事業家としての創業者の「座右の銘」として大事にされた言葉です。「自分の置かれた環境や立場を正確に理解し、今、何をすべきかを冷静に考える」と置き換えて読めると思います。「好時、魔多し」とも言っていましたたが、事業が順調な時ほど、足元をしっかりと見ること。他人の意見は聞くが、最後は自らを顧みて判断すれば間違いが少ない・・という事と理解しております。

2、「漁夫生涯竹一竿」 「一生の仕事を捧げられる仕事を持つ」「プロフェッショナル」と言葉を変えて使っておりました。「人間は親からもらった才能というものがある。50しか貰えなかった人もいれば、100貰った人もいる。でも、50しか持たない人でも、努力して使いきれば50の力を出せる。100貰った人がさかのぼって30しか発揮できなければ、50の人に追いつけない・・」と、一つのことに集中して努力を怠らないことの素晴らしさを、折に触れて説いておりました。

3、「望みなさい、叶えられます」 「目標を定め、計画を立て、一生懸命努力すれば、必ず目標に達成する。できなくとも近くまで行ける」とも言い換えて使っていました。 「出来ないのは出来るまで努力していないから」「不可能は千に三つ」も良く使われ、努力することの大切さ、それが実った時の喜びの大きさを熱く語っておりました。「一生懸命が一番強い」創業者からの叱責の一番の要因は「さぼる」ことでし。

4、「新しいものをつくりだせないものは落後する」                                 標語として、創業期より幹部会議室に揚げておりました。「現状に満足しない、満足したらアイデアが湧かない」の言葉通り、創業者は無類のアイデアマンでした。ご本人の弁によれば、学生時代のカンニングの手法については、勉強するより熱心に研究した・・・ほどで、セントラルキッチンの発想に繋がる食品の冷凍に関しても、きっかけはアムンゼン(ノルウェの探検家)の南極探検記を読んだことでした。コックの作った料理を冷凍し、解凍してお客様に提供することなど考えつかぬ時代でしたので、導入時には多くのコックが反発して会社をさったた・・・という話を聞かされました。      「飲食産業を産業化する」という問題意識があればこそ、発想出来得たことであり、決断できたことだろうと考えます。  
「企業寿命30年説」というものがあるそうですが、新しい付加価値を生み続けていく不断の努力の原点がこの言葉の本質であると捉えております。

5、「ものの考え方を売る」 
「商品には企業の考え方が反映されており、その考え方に共感を覚えるお客様が購入される」                     考え方=価値観と置き換えられていると思います。創業者が事業を行うにあたって、一番大切にしたことは「ロイヤルらしさ」という「ブランド」でした。「ブランド」とは、「お客様との約束」と訳されることも多いと思いますが、「お客様の期待にこたえる」「さすがはロイヤル」とお褒めの言葉をいただける商品であり、サービス、店舗(QSCA)でなければならない。「商売とは信用である」という強い観念を持たれておりました。「企業の価値観」は「社風」に根差すと考え、創業者になって経営の一線から退いたのちも、「社風」担当役員として、最後の最後まで指導わ行われました。

6、「職人」                                                  「職人とは職業人であり、プロフェッショナルのことである」入社式では必ず話した言葉であり、自身も「僕も職人だ」といって憚りませんでした。「職人=プロ」とは、その道におけるエキスパートであり、「知識」と「技術」を身に付けた人である。自らを「職人」と考える創業者は、「社長と社員」という関係よりも「親方と弟子」という接し方わ好み、時には手を上げて「弟子」の育成に力を注ぎました。「有難う」という言葉は、「職人」が自分のこさえた作品を、その他沢山の同等品のなかかなら選んで貰えた「有難い」という語源である・・・という記事に出会った時は、「職人である誇り」を持つべきだ・・・と「職人」への思いわ更に強めておりました。

7、「天を恐れる」                                                           世の中に不祥事がおこる度に、自戒の意味を込めて話をされました。「誰も見ていないからいい」「法に触れていないからいい」とう考え方もあるだろうが、でも「天は見ている!」父親が大切にしていた「禅」の影響か?1954年の査察の反省か?背景はともかく、「胸を張って」大道を歩くことが「事業」・・・と考えておりました。コンプライアンスが声高く叫ばれる昨今ですが、「天に唾すれば、必ず自身に跳ね返る」の想いは常に心の奥に秘められておりました。                 

8、「78 点主義」                                                    「食べ物屋に100点はない。78点取れれば合格」それほど食べ物屋という商売は難しい・・・という教えですが、だからといって78点でいいとは一度も口にしたことはありません。常に100点を狙って努力してこそ78点がとれる!ということであり、少しでも努力を怠れば、即不合格ということです。「常に自分の全力で仕事にとりくんでいるか?」大変厳しい言葉と捉えております。                                                   

9、「衆知」                                                          創業者には「主治医」と言われる方が20名以上いらっしゃいました。内科、消化器科、外科、整形外科、眼科、歯科・・症状別に、それぞれの専門医に意見を求められ、薬の知識などは薬局で聞くより詳しいほどでした。「自分自身の知識には限界がある。一番いいものを作るためには、一番知識を持っている人から知識をいただくのが早道」ということで、経営に関しては勿論、建築やデザイン、果ては植木に至るまで幅広い人脈を築かれ、事にあたって的確な助言を求められました。「相手の実力を引き出すのは、こちらの姿勢次第」といわれ、相談前の準備は勿論のこと、日常のお付き合いも大変大事にされておりました。ただし「決断は自分で行い、一切の責任も自分が負う」というスタンスは生涯変わることなく、「経営者は孤独だ」としみじみと漏らされていたことも印象に残ります。                         

10、「コミュニケーション」                                                         「やってみて、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ」有名な山本元帥のお言葉ですが、基本は「相手が理解するまでやり続けること」と言っておりました。元帥ほど手間暇は掛けられなかった面はありますが、「率先垂範」を幹部の心得とし、自らは「殿さま」ではなく「侍大将」を自認しておりました。指導は常に熱意と愛情に溢れ、時として誤解を招く(指導を受ける方が怒られてると誤解する)こともありましたが、「怒っているんじゃない、叱っているんだ」と混同しがちな「怒る」と「叱る」を使い分け、何度も何度も繰り返しておりました。褒められた社員は殆どいないと思いますが、その分「ありがとう」の一言には万感の重みがありました。全ての苦労が報われる思いが、江頭流のコミュニケーションの根幹だったと考えます。                                                     ※1978 年、福岡証券取引所に外食産業として初めて上場を果たした折、兄とも慕う三井工作所(現:三井ハイテック)の三井孝明社長から、記念の甲冑をいただきました。添え状には「この甲冑は侍大将の物であり、殿様のものではない。いつまでも現場で指揮をとれ」というメッセージ込められていたと聞いています。その甲冑は今も福岡本社のトレーニングセンターに置かれ、創業者の志を継ぐ幹部を見守り続けております。                               

11、「手をあてる」                                                        事に当たるに際し、「深く掘り下げる」ことを常に要求しておりました。「よく考える」「人の意見を聞く」ことも、その一つの手法であったと考えますが、そうやって様々な角度から多面的に物事を捉える思考法を身に付けることが、プロとしての「知識」の積み重ねに繋がると考えておりました。直ぐに答えが出たとしても、それが「最善」の答えなのか?今一度手を当てて検証してみる・・・何事においても仕事に取り組む姿勢として、自らも実践され、社員に厳しく指導され続けました。                                                         

12、「チャンスは平等にある」                                                       「思いつき」「閃き」・・・英語では「Break Through」と言われますが、他人事のように考えている社員が多いのが実情ではないでしょうか?私事ですが、創業者と初めて海外出張にご一緒させていただいた折、帰りの飛行機で上映された映画について、福岡への乗り継ぎ便までの待ち時間にお叱りを受けたことがありました。創業者から「映画に出てきた広間で食事をするシーンの、暖炉の上に掛かっていた絵の額縁を覚えているか?」と質問が飛んできて、頭が真っ白になった私に「同じ飛行機に乗り同じ時間を費やして、僕はプロとして一つの知識を得たが、君はそのチャンスを逃がしてしった」・・これらのエピソードを数え上げると枚挙に暇がありませんが、「問題意識を持ち、常に頭を働かせていれば、チャンスは向こうから飛び込んでくる。拒むかどうかはその人次第・・」事実、創業者の頭の中は、24時間、365日仕事のことで一杯であったが故に、様々なアイデアや方針が生まれてきたのだと思います。                                  

13、「欲しいものは買うな、必要なものを買え」                                                        創業期にお世話になった銀行家からいただいた言葉ですが、生涯大事にしておられた言葉です。事業が上手くいって資金の心配がなくなり、お金に余裕ができてくると必ず「欲しいもの」に手を出してしまいがちです。逆に考えると、人間といううものは「欲しいもの」を「必要なもの」と考えがちとも言い換えられます。買ってしまって「無駄だった」と後悔する前に、「欲しいものか?」「必要なものか?」を今一度検討してみる慎重さこそが「必要」ということでしょう。代金の大小によらず、判断する物差しとして大事な教えであると思います。                                               

14、「小さなことの積み重ねが大事」                                                    「着眼大局、着手小曲」と言われた方がいらっしゃいまが、「些細なこと」を見逃していると、大事な点も見逃すことに繋がる・・という、創業者の経験からきた考え方です。「小さなゴミを拾わない人は、電球が切れていても気づかない」一事が万事でないにせよ、「気づき」はホスピタリティビジネスに欠かせぬ素養であると説いておりました。創業者は訪店の際よくバックヤードから入り、一番に事務所の引き出しを開けさせておりました。「机や金庫の中がキチンと整理されているお店(店長)なら、他を見なくても心配ない」「汚れたエプロンを付けているコックはの料理は美味しくない」など、お店の隅々まで、その厳しい目線でチェックを行っておりました。「現場に神宿る」・・企業再生を担う方が発言された言葉ですが、「その通りだ」と感心しておりました。最後までお店を大事に、小さいことがキチンとやれて、それが積み上がってこそ、お客様の満足に繋がる・・と思いを持ち続けておりました。

15、「平等と公平」                                                                  様々な方面で取り上げられている課題ですが、創業者も「平等と公平は違う」と言い、「だから僕はエコひいきをする」と堂々と発言しておりました。「平等」とは「同じ」ということだが、社員夫々に能力も違えば、努力の差もあり、結果、成果には大きな差が生じる。その成果に応じて地位や報酬を与えることが「公平」ということ・・が持論でした。      「機会応分」が含まれるということだと思います。「出来る人間には投資をする」という考え方で、自宅に「書生部屋」を設け、社員は勿論、時には社外の人間をも預かって指導と投資を繰り返しておりました。他にも「目をかけた」社員には、若くとも次々と困難な仕事や職責を与え、年功序列という考え方には否定的でした。人の面における「選択と集中」とも言えると思いますが。「有効なお金の使い方」として、「平等」に教育を行うやりかたを、終生快しとはしませんでした。

16、「食べ物屋の良心」                                                          様々な場面で用いた言葉ですが、奥が深くて真意は掴み切れぬままです。「飲食店」「飯屋」「外食店」という言葉は使わず、「食べ物屋」を好んで用い、提供するものは「食事」であり「料理」とは違う・・「高級料亭」ではなく、「大衆」相手でこそ、産業化と言える・・との想いが背景にあってのことと推察しております。「良心」とはホスピタリティを指すだけではなく、「食べ物屋」として果たすべき責任や、経営理念にある「正当な利潤」にも繋がる想いがあります。多店舗化を急ぐあまり、店舗のコストダウンを検討していた際、「儲けすぎる必要はない。キチンとお客様に返してこそ、共存共栄ができる」と話したことがあり、メニュー開発の場面でも「必要なコストはかける」と、顧客との信頼関係の基礎となる核心部分を「良心」と表していたのではないかと考えております。

17、「やすらぎ」                                                          福岡市にある創業者の墓碑にある言葉です。創業者は生前に墓所を設計され、墓碑に刻む言葉に「やすらぎ」を選ばれました。「事業家として、本当の意味での<やすらぎ>は死んだ時にしか来ない」「死を<やすらぎ>と思えなくなった時には、仕事をさぼっている時」<やすらぎ>の言葉とは裏腹に、凄まじいまでのエネルギーを感じる言葉ですが、紛れもなく、創業者は亡くなる殺那まで、その生き方を貫き通されました。本当の<やすらぎ>とは、自分を追い込んで、ひたすらに走り続けた人にしか体感できないものなのかも知れない・・毎年、白い墓標の前に座る度に背筋が凍る想いを感じております。

18、「三つの視点」                                                              「お客様の視点」「従業員の視点」そして「経営者の視点」店つくりは勿論、物事の判断の物差しとして、これら三つの視点で、バランスを取ることが重要と考えておりました。目指すべきは店づくりとは、お客様にとって「居心地が良く」、従業員にとって「働きやすく」、経営者にとって「儲かる」店に他なりません。設計者任せだと顧客優先、事業部任せだと従業員優先となりがちですが、ここに「経営者目線」で閂を入れることは忘れてはいけません。サービス産業においてはES (従業員満足)あってのCS(顧客満足)という考え方もありますが、経営者の視点として、CSとESに優先するという考えを持っておりました。「お客様の喜びを自身の喜びとして受け止める人」こそが、ホスピタリティパーソンの原点と考えていたように思えます。

19、「徳川家康」                                                            作家、山岡荘八による全26巻の長編小説で、ギネスにも登録され、文庫本で総ページ数11,249 頁という大変長い物語ですが、海外出張の際に無作為に2~3巻持参するなど愛読しておりました。「この本には2,000人ほどの登場人物が居り、夫々どういう考えわ持ち、行動をとって、結果どうなったか?様々な事例を学ぶことができ、経営者にとって大変参考になる」と申しておりました。他にも伊達政宗、織田信長、太平記など、歴史小説も広く読んでおりましたが、「経営書」として常に書斎の本棚に並べておりました。「人を動かすのは、その人の志の高さである」佐世保市のハウステンボス創業の際の神近社長と初めて会われた折、徳川家康を引き合いに出され、この長編の本質を口にされたことを鮮明に覚えております。史実はともかく、山岡荘八の描く家康は「この世から戦を無くす」という志(大義)を揚げ、周りの有力者の共感を得て天下統一を果たしていく内容となっており、「飲食業を産業化する」という自身の想いと重ね合わせ、「自分の為でなく、社会の為に飲食業を産業化させる」という理念を一層堅固なものにしていく糧になったのではないかと推察しております。

         

 

                                  

  

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